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便秘

便秘の定義にはいろいろなものがありますが、回数が少ないということよりも、便が出づらく(排便困難)、腹部膨満などの不快な症状を伴っていれば、便秘ということができます。便秘の原因としては、大腸の機能的な不具合から起きる機能性便秘が最も一般的なものですが、なかには大腸癌などによる器質性便秘、薬剤による便秘や、便秘が起きやすくなる疾患による症候性便秘があり、まずこれらを除外する問診や検査を行います。器質性便秘、症候性便秘が除外された場合に、機能性便秘として生活習慣改善や薬剤による治療に取り組みます。

 

機能性便秘

ここからは機能性便秘につき解説致します。まず排便の仕組みについて理解します。

 

小腸の内容物は液状のまま大腸に到達し、水分が吸収され、腸内細菌の作用をうけながら次第に固形の便を形成しつつ、上行結腸→横行結腸→下行結腸→S状結腸へと進みます。S状結腸に到達した便は固形の状態で貯留されます。そして大蠕動と呼ばれる1日1〜2回起きる腸の蠕動運動によって直腸に移動します。この大蠕動は食事をして胃が膨らむことで起きる胃結腸反射によって引き起こされます。便が直腸に流入すると直腸内圧が上昇し、40~50mmHgに達するとこの伸展刺激が骨盤神経を介して仙髄の排便中枢に伝わります。するとこの情報は大脳に伝わり、便意を自覚します。この時点では大脳からの抑制で排便は起こりません。便が肛門付近まで下がると直腸肛門反射により内肛門括約筋が弛緩して、まさに便が排泄される状態になり、同時に随意筋である外肛門括約筋が意識的に肛門を閉鎖します。トイレに行って前かがみの排便姿勢がとられると恥骨直腸筋が弛緩して直腸肛門角がゆるくなり、便が通りやすい状態となります。この状態でいきみとともに意識的に外肛門括約筋が弛緩して排便が行われます。

 

生活習慣・排便習慣

便秘を解消するにはこの排便の仕組みに逆らわないように生活する必要があります。胃結腸反射は胃が空っぽになる朝が最も起こりやすいといわれます。朝ギリギリまで寝て、朝食を摂らずに職場や学校に行っていないでしょうか。強い大蠕動を起こすには十分な睡眠をとり、早起きをして、しっかりと朝食を摂るようにします。できれば朝食まえに一杯の水や牛乳などを飲むと効果的です。そして出勤(登校)の前に便意をもよおしてから排便をするための時間を十分とりましょう。たとえ便意を感じなくても、トイレにいって排便を試みるという習慣をつけるといいでしょう。また便意を感じたら我慢せずに、すぐにトイレに行って排便し、直腸はいつも空っぽにしておくことも大切です。

 これらをきちんとしないと仕事中などに便意をもよおす事になります。直腸には便が充填されているのにトイレにいけずに我慢してしまいます。すると便意は消失します。直腸の便は水分が吸収されて小さく、硬くなり、排便しにくくなります。また直腸に常に便が存在すると、直腸の圧受容体が鈍くなり(閾値が低下)、便意をもよおしにくくなり、排便をしないまま便が溜まっていきます。そして腹部膨満感などの症状で辛くなると、刺激性の下剤を使って強制的に排便をすることになります。このようなことを繰り返していると次第に下剤は効きにくくなり、便秘はどんどん難治性になっていきます。この状態がさらに続いて高齢になると、運動不足も重なって腹筋なども弱くなり、排便できなくなって直腸に硬い便が充満してしまうこともあります。浣腸をしてもでないほどになると、指を肛門から入れて、便をかき出さなければならないほどになることもあります。

 まずは薬を使う前に、あるいは薬を使いながらでもいいので、排便習慣をしっかりつけるようにしましょう。

 

食事

食物繊維が不足すると便秘になります。食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があります。水溶性食物繊維は保水性が高く、便の水分量を多くして柔らかくします。また腸内の善玉菌を増やす働きがあります。不溶性食物繊維は便のかさを増すことによって腸を刺激して蠕動を促す作用があります。食物繊維というとサラダを思い浮かべるかもしれませんが、レタスやきゅうりやトマトの食物繊維は100gあたり1g程度と少ない方です。効率よく食物繊維を摂るには以下のようなものをお勧めします。いずれも水溶性、不溶性食物繊維を多く含みます(きのこ類、豆類は不溶性食物繊維の割合が多いです)。不溶性食物繊維を摂りすぎるとかえって便秘が悪くなることもあります。

 

穀物:大麦(麦ごはん)、ライ麦(ライ麦パン)、オートミールなど

野菜:ごぼう、枝豆、オクラ、かぼちゃ、ほうれん草、ブロッコリー、人参、など

果物:アボガト、いちじく、キウイ、いちご、りんごなど

きのこ:キクラゲ、なめこ、マシュルーム、えのき茸、しいたけ

豆類:大豆(納豆、おから)、インゲン、小豆

イモ類:さつまいも、里芋、山芋

海藻類:寒天、ひじき、わかめ、昆布

木の実、種:ごま、アーモンド、栗、ビスタチオ、落花生

 

腸内環境を整える

大腸の腸内細菌は健康な場合、善玉菌 20%、悪玉菌 10%、日和見菌 70%の割合で存在します。善玉菌の乳酸菌やビフィズス菌は、糖類を発酵して乳酸や酢酸を作ります。これらは腸内を弱酸性の環境にします。この酸の刺激により腸の蠕動運動は活発になります。ところが、タンパク質や脂肪が多く、食物繊維が不足した食事を摂っていると、このバランスが崩れ、悪玉菌が増加します。悪玉菌はタンパク質や脂肪を腐敗させ、アンモニア、インドール、フェノール、アミンなどの体に有害な物質を産生します。また腸内はアルカリ性に傾き、善玉菌に不利な環境となって、さらに悪玉菌を増やす事になります。肉類に偏った食事は改めて、善玉菌が好む野菜、海藻、穀物をしっかり取り入れた食生活にして、弱酸性の腸内環境を保ちましょう。また発酵食品である納豆や漬物、特にビフィズス菌や乳酸菌を豊富に含むヨーグルトは毎日食べるようにしましょう。また善玉菌の餌になるオリゴ糖を含むはちみつやバナナをヨーグルトと一緒にとるとより効果的です。

 

運動

運動不足や加齢で腹筋が弱くなると排便時のいきみが弱くなります。ストレッチや軽い筋トレをする習慣をつけましょう。またウォーキングやジョギングなどの有酸素運動をする習慣があると、副交感神経が活性化されます。腸の蠕動運動や腸液の分泌は副交感神経によって促進されるので、これらの運動も習慣的に行うと良いでしょう。

 

薬物療法

食物繊維が不足している場合は、カルメロースナトリウム、ポリカルボフィルカルシウム(コロネル)などで便量をふやします。食物繊維が十分摂れているのに便秘が改善しない場合は、酸化マグネシウムやDSS+カサンスラノール(ビーマス)、ルビプロストン(アミティーザ)、リナクロチド(リンゼス)などを使用します。これらは便の水分量を増やして柔らかくします。なるべく非刺激性の下剤を中心に治療しますが、便が1日を通して出ない場合はピコスルファートナトリウム(ラキソベロン)やセンノシド(プルゼニド)を頓用で使います。刺激性下剤は便が溜まってしまった場合のレスキューとして使用し、連用は避けるようにします。また腸管運動を促進するような薬、モサプリド(ガスモチン)や漢方の大建中湯を併用することもあります。

薬の説明→便秘薬

 

難治性の便秘の中には便排出障害が含まれます。原因として骨盤底筋協調運動障害、腹筋・骨盤底筋の筋力低下、直腸知覚低下、直腸収縮力低下などがあります。いきんでも出づらく、残便が多かったり、軟便でも排便が困難な場合は専門施設での精査が必要な場合もあります。

 

機能性便秘の分類

 

大腸の内容物の通過時間と排便障害の有無から分けた分類で、normal transit type(大腸通過時間正常型)、slow transit type(大腸通過時間遅延型)、outlet obstruction type(便排泄障害型)があります。大腸の通過時間は消化管シンチグラフィーやレントゲン不透過マーカーなどで測定します(日本ではこれらの検査はかなり専門的な一部の病院でしか行われていません)。

 

大腸通過時間正常型

機能性便秘の過半数はこのタイプです。便が結腸を通過する時間は正常ですが、食事量が少なかったり、食物繊維が不足して便の量が少ないために、大蠕動が起こりにくくなり、排便回数が減少します。またこのタイプは便排泄障害型を合併することがあります。便意を感じ難くかったり、排便反射が起き難くなり、直腸に便が貯留して硬便となり、排便が困難になります。

 

大腸通過時間遅延型

大腸の蠕動が弱くなり、通過時間が長くなって便が大腸内に貯留します。このため排便回数は減少し、週1回以下となることもあります。初潮後の女性によくみられるタイプで、女性ホルモンが関与するといわれます。生理前に便秘になったり、妊娠中に便秘になるのも女性ホルモン(プロゲステロン)によるものと考えられます。この便秘は食物繊維を摂るとかえって増悪することがあります。

 

便排出障害型

直腸に溜まった便を排出するときに関与する骨盤底筋群の強調障害や直腸知覚の低下、直腸収縮力の低下などが原因で排便困難になります。薬剤でのコントロールが困難な場合は専門病院での検査・治療が必要です。

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下痢、便秘、血便・下血、吐血などです。

健診で肝機能障害、胃隆起性病変、胃粘膜不整、ヘリコバクター・ピロリ陽性、便潜血陽性など指摘された方はご相談ください。

肝炎や炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)、過敏性腸症候群など専門的に診療いたします。

 

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